はじめに
この記事は,関西大学外国語教育学研究科博士課程前期課程で田村の指導を希望する人向けの文章です。田村研究室のスタンス,指導方針,どういうことを期待しているかについての私の考えを書きます。
まずは,この文章を読む前に,大学院の募集要項や,外国語教育学研究科のカリキュラム等をお読みになってください。
なお,私は大学院生の指導経験はこの記事執筆時点ではゼロです。よって,ここに書いていることが実際にやってみたらうまくいかないので方針を変える,みたいなことも起こりうると思います。ただ,その時は勝手に決めるのではなく,学生と話し合って方針の変更を決定しようと思っています。
私の研究室・指導に対するスタンス
研究テーマ
私が現在主に取り組んでいるのは,認知的アプローチの第二言語習得や心理言語学など,人の頭の中の仕組みについての研究です。特に,数の一致現象に関わる形態素の処理や,明示的・暗示的知識と呼ばれる概念について興味があります。そちらがメインの研究ですが,指導可能なテーマとして,「タスク・ベースの言語指導」も書きました。理由は,タスク・ベースの言語指導に教育上の強い関心をずっと持っていることと,その領域について,修士課程の院生を指導できるレベルの体系的な知識を持っていると自負しているからです(もちろん,過去の研究・教育業績もあります)。
指導方針
修士論文に求めることは,新規性や独創性よりもむしろ,研究としての隙のなさ,かなと思います。修士課程の2年間で,何か独創的で新規性の高いことをやろうというのは相当ハードルが高いので,まずは研究として求められる方法論を守って研究を完遂できることを求めたいと思います。
指導のプロセスしては,定期的にゼミで活動報告をやってもらいます。その月に読んだ論文や,考えたこと,取り組んだこと,課題などを整理してまとめ,手短に報告してもらいます。こうした機会を設けることで,研究活動がうまくいっていない場合にそれが見逃されてしまうことを防ぎ,適切なサポートを提供できるようにします。
一方で,学生の自主性・自律性も尊重し,むしろそれを伸ばしてもらいたいとも思っています。教員に全て教えてもらう,というスタンスではなく,必要な情報には自分から進んでアクセスできる姿勢を大事にしてもらいたいです。もちろん,そのために必要なサポートは提供します。研究テーマも,私が取り組んでいるテーマに無理に寄せる必要はなく,学生さんの興味関心からスタートしてもらって構いません。しかしながら,研究課題やリサーチクエスチョン自体は,先行研究から導出されるべき,というスタンスでいます。
研究遂行におけるスキルと専門知識
実際に実験を行ってデータを収集し,それを量的に分析することを求めます。そのために必要な統計解析の知識等は,研究科で開講されている授業以外にも,私が学部生向けに開講しているデータサイエンスの授業の聴講や,自主的に勉強会(外国語教育メディア学会中部支部基礎研究部会の例会等)に参加することを強く奨励します。
もちろん,私自身にも知識と技術がありますので,ゼミの中でそういった内容を扱っていくことも考えています。
学会発表・論文執筆の奨励
学位論文研究の成果を,学会発表や学術論文投稿というかたちで対外的に発表することを積極的に奨励します。
私の所属している学会の中には,学生が発表してアドバイスをもらうセッションが設定されている学会もあります。そういう機会に積極的に挑戦しようとする方を全力でサポートします。
そのための準備として,発表練習をゼミの中で行ったり,論文の執筆に対してフィードバックを行うことも必要に応じて行います。
学位論文研究以外のサイドプロジェクトを学位論文研究と並行して行うことも,それが学位論文研究の遂行を著しく阻害することがなければ奨励します。また,個人で行うだけでなく,ゼミ生同士での共同研究や,私が入っての共同研究という形にすることも,相談していただければ基本的に奨励します。
修了後の進路に対する考え方
修士課程修了後には,様々な進路があると思います。博士課程への進学が全く前提ではありませんし,教職に就くことや,多様な一般企業への就職もあるでしょう。どんな進路に進むにせよ,その進路を最大限にサポートします。
大学院に進学する理由は様々だと思いますが,「専門的な知識を身につけたい」と思う人は多いでしょう。大学院に行けば,ある専門分野の知識が増えるのは間違いありませんが,そこで身につけたものに「満足する」ということはないと思います。勉強すればするほど,「自分の知らなかったこと」がどんどん増えていく感覚になると思います。私は,その気持ちで,知らないことを知ろうとすること,一生勉強し続けようと思う気持ちというのが,どんな仕事をする上でも大事だと思っています。大学院修了者が強いのはそこかなと思います。もちろんこれは,大学院に進学していない人は勉強のモチベが低いとかそういうことでは全くありません。
こういう人が研究室に合うかな?
これは,学部のゼミ生向けの文章にも書いていますが,知的好奇心と探究心がある方が大前提ですね。また,大学院生にはある程度の自律性や主体性も求めたいです。何でもかんでも教員に手とり足とり教えてもらいたいという人よりは,自分で課題を見つけて,その解決に向けて主体的に研究を進められる方が合うかなと思います。とはいっても,我が道を行くパターンでこちらの助言を何も聞き入れてもらえないっていうことだと困ってしまうので,他人の意見も上手に取り入れながら進めていける人が理想なのかなと思います。
あとは,既存の研究を批判的に評価し,自身の研究に活かす能力も大事だなと思います。私にとって,研究者に最も必要な能力ってこれじゃないかなと思ってくるくらいです。こういうことの積み重ねが分野を前に進めていくと思うので。
また,研究で直面する困難や課題に対して粘り強く取り組む姿勢も大事ですね。これは,「研究」の部分を別のことに入れ替えてもらってもいいです。なんでもいいんですが,困難や課題に直面したときに,それが自分の心的・肉体的健康を害するものでなかったら,逃げずに粘り強く取り組む姿勢ってやっぱり大事なんじゃないかなと思うのです。根性論というわけではなくて,ある程度の精神的なタフネスがなかったら,大学院生として研究を遂行するのは難しいのかなと思います。
最後に,誰かの権威に寄りかかるのではなく,自分自身の言葉で思考し,議論できることを重視します。所属組織や指導教員が誰であるかといった背景に関わらず,一人の研究者としてお互いに敬意を払い,フラットな立場で学問的な対話ができる方を歓迎します。これは,私が学生の方々にそういう態度で接したいという思いもありますし,個人的に,著書にサインを貰って回っているような人が好きではないというのもあります。この思想自体は大学院生時代の先輩からインストールされたものだと思うのですが,それってハナからそのサインを貰いにいった人のことを対等だと思っていないっていうことではないかなと思うのです。たとえば,私がガンバ大阪の選手のどなたかからサインを貰える機会があったとしたら,それは絶対にほしいし,それを周りに自慢するでしょう。それは,「ファン」としてそういう目で見ているからです。そりゃあ,プロサッカー選手でも,自分が憧れていたような選手たちと対戦する機会に恵まれたら,ユニフォームの交換をしてもらったり,サインを貰ったりすることはあると思うんです。それとパラレルに考えたらそういうもんだよねという気持ちもありつつ,研究をする人,特に,博士課程を考える人はそのマインドはどこかでなくさないと,一生そういう立場で終わってしまうのでは,という気持ちがあります。
研究室の雰囲気・体制
正直これは,院生さんが入学されてこないとなんとも言い難いです。ただ,外国語教育学研究科には多くの教員が在籍しており,私のゼミが大規模になることはないと思いますので,1人,多くても数人のゼミになると思います。そうした中でも研究活動を進めていくためには,研究室の範囲を超えた交流が不可欠です。学会参加等を通じて他の大学院の院生と交流したり,自主的な勉強会を開催して繋がりを広げていくことも有益だと思います。そうした機会をできるだけ提供できるように,サポートします。
研究環境としては,反応時間測定実験などに利用できるGorilla Experiment BuilderやjsPsychを利用したWEBアプリについては,相当特殊なことをやろうとしない限りは雛形の流用でいけると思うので,何か一から実験プログラムの構築の必要はないと思います。前者についてはオープンソースでいろんな実験が使えますし,後者については私が過去にやったことある実験のプログラムを流用できると思います。ハードウェアについては,共同研究室に荷物を置きっぱなしにしたりできないので,何か提供することは難しいかなと思います。私の研究室にあるモニタやデスクトップPCをそこで使ってもらう,みたいなことは全然構いません。
書籍についても,私の研究室にある本は基本的に自由に貸し出しできると思います。
応募を検討している方へ
私の指導を希望している場合,必ず事前に連絡してほしいとまでは思っていませんが,できる限り事前にコンタクト取ってもらえたらありがたいです。どういうことに興味があるかとか,それを私のところで修士論文という形にできそうか,ということが事前にわかっていた方が,ミスマッチを防ぐことができると思いますので。
問い合わせ先は,私のメールアドレス宛にお願いします。研究科の教員紹介ページ,または私の個人のウェブサイトのトップページに載せています。
おわりに
この記事も,追記や加筆修正することがあるかもしれませんが,その時はその都度この下に加筆修正した日時を書いておきます。とりあえず,現時点で私が伝えておきたいと思ったことは以上です。
この記事をお読みいただいた上で,ぜひ田村研究室で学びたいと考えられた方は,ご応募お待ちしています。たくさんの院生さんと一緒に学んだいけることを楽しみにしています。
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