田村ゼミに関心のある人へ

このページは,田村ゼミに関心のある学生さん向けに,新しく整理して作った案内ページです。

以前から,「ゼミ選びのプロセスでこのページに来た人へ」という記事を公開していました。あちらはあちらで,その時々に考えていたことや追記の履歴も含めて残しておきたいと思っています。ただ,読み物としては少し長くなり,情報も継ぎ足し気味になってきたので,「これからゼミを考える人がまず読むページ」として,あらためてこちらを作りました。

書いてある内容や基本的な考え方を大きく変えたわけではありません。構成を整理し,ゼミの内容や相性が前よりわかりやすく伝わるようにしたつもりです。まずはこちらを読んでもらえればと思います。

はじめに

関西大学外国語学部の学生さんで,3年次の専門演習・4年次の卒業演習(いわゆるゼミ)選びの中で,1ミリでも田村という選択肢を考えてこのページに来た人がいたら,ぜひ読んでください。私の授業を履修していて,「どんなゼミなんだろう」と思った方に読んでもらっても構いません。

  1. はじめに
  2. 田村はどんな人か
  3. 田村ゼミはどんなゼミか
  4. このゼミでやること
  5. 研究テーマはどのように考えるか
  6. ゼミでの進め方とサポート
  7. こういう人は合うと思います
  8. こういう人は,他のゼミの方が合うかもしれません
  9. 就活や進路について
  10. 面談について
  11. ゼミに入るか迷っている人へ
  12. 最後に

まず最初に,シラバスは必ず確認してください。このページでは,シラバスだけでは伝わりにくい,ゼミの雰囲気や考え方,どういう人に合いそうかということを書きます。

また,私がやっているブログの記事にも,私が大学で何を大事にしているのかとか,研究や教育をどう考えているのかが少し出ていると思います。この記事を読んで少し気になった方は,ブログの記事やプロフィールのページも適当に眺めてもらえると,「田村はこういう感じの人なのか」ということが多少伝わるかもしれません。

田村はどんな人か

ゼミの内容ももちろん大事ですが,実際には「この教員と2年間やっていけそうか」というのも,ゼミ選びではかなり大事だと思います。ただ,ここで自分はこういう人間ですと長々と自己紹介するのも少し変な気がします。

もしも,田村が普段どんなことを考えているのかに興味があれば,私が個人でやっているブログの記事を読んでみてください。授業や研究の話だけでなく,大学で学ぶことの意味や,教育について思っていることもときどき書いています。また,匿名質問サービスの回答には,もう少し人となりが出ているかもしれません。そういうものを見たうえで,「合いそう」「合わなさそう」を判断してもらって大丈夫です。

ブログ:https://tam07pb915.com/

匿名質問サービス:https://querie.me/user/tam07pb915

田村ゼミはどんなゼミか

田村ゼミでは,おおまかにいえば,「人の頭の中で言語がどのように学ばれ,どのように処理されているのか」という問題を考えます。第二言語習得や心理言語学に関心のある人に向いているゼミです。

たとえば,

  • 人は外国語をどのように身につけるのか
  • 自分では気づいていない言語知識はあるのか
  • 文を読んだり聞いたりするとき,頭の中では何が起きているのか
  • 言語に関する判断は,どんな条件で変わるのか

といった問いに興味がある人は,このゼミと相性がいいかもしれません。

ただ,この説明だけだと少し抽象的ですよね。たとえば,心理言語学では,人が文を読むときに,最初から正しい構造を一発で理解しているのか,それとも途中で勘違いして読み直すことがあるのか,といったことを調べます。

たとえば,次のような文を考えてみてください。

  • The defendant examined by the lawyer turned out to be unreliable.
  • The evidence examined by the lawyer turned out to be unreliable.

最初の文では,主語の defendant は有生物なので,examined を最初は「defendant が誰かを調べた」というように,本動詞として解釈してしまうことがありえます。ところが,by the lawyer を読むと,そうではなく,examined by the lawyer 全体が defendant を修飾しているのだとわかります。つまり,途中で最初の解釈を捨てて,文の構造を解釈しなおさなければいけません。そのため,読むのに余計な負荷がかかります。

一方で,二つ目の文では,主語の evidence は無生物なので,examined を「evidence が何かを調べた」とは解釈しにくいです。そのため,evidence examined … の時点で,examined は evidence を修飾する過去分詞だと比較的自然にわかります。こちらは最初の段階で正しく構造を捉えやすいので,文をよりスムーズに読めると考えられます。

上のような英文を読んでいるときにかかる時間(単語単位の読み時間)を調べると,どこでつまずきが起こっているのかを調べることができます。負荷がかかるところでは,読みの時間が長くなるからです。単語がたった一つ違うだけなのに,二つの文では,上で見たように,主語名詞の意味的情報と動詞の関係性によって,処理の違いが生まれます。つまり,人は文を読むときに,単語をただ順番に処理しているわけではなく,「主語がどんな名詞か」「この動詞はどういう使われ方をしやすいか」といった知識を使いながら意味を予測しているのです。こういう仕組みを明らかにするのが,心理言語学研究の面白さの一つです。

さらに,こうした問いを第二言語学習者に広げると,学習者がどのような知識を使って文を理解しているのか,どのような点で母語話者と同じように処理できて,どのような点でまだ難しさがあるのか,といったことも見えてきます。そういう意味で,「人間は言語をどう理解しているのか」「第二言語ではそれがどう変わるのか」に興味がある人にとっては,かなり面白い領域だと思います。ちなみに,私自身も,上のようなガーデンパス文の特殊なケースを第二言語話者に応用した研究を行ったことがあります(Tamura et al., 2019)。

あるいは,第二言語習得でいえば,学習者が「知っているつもり」のことと,実際にリアルタイムで使えている知識が同じなのか,というような問いもあります。外国語の学習について,単に「どう教えたらいいか」ではなく,「そもそも人はどう学んでいるのか」「どんな知識を持っているのか」を考えたい人には,面白い領域だと思います。

ゼミでは,こうした大きな問いを,卒業プロダクトとして扱える,もう少し具体的な問いにしていきます。いきなり完成したテーマを持っている必要はありませんが,自分なりに問いを立ててみたい,考えてみたいという気持ちは大事にしてほしいと思っています。

このゼミでやること

ゼミでは,主に次のようなことをやっていくことになります。

  • テーマを考える
  • 関連する文献を読む
  • 問いを具体化する
  • 必要に応じて調査や実験の方法を考える
  • 発表したり,文章にまとめたりする

もちろん,年度やテーマによって進め方は変わります。ただ,基本的には「教員から与えられた答えを覚える場」ではなく,「自分で問いを立てて,調べて,考えていく場」だと思ってください。

専門演習・卒業演習では,問いの立て方,文献の読み方,文章のまとめ方など,いろいろな力が必要になります。ゼミは,それを一歩ずつ身につけていく場でもあります。

研究テーマはどのように考えるか

私自身が主に関心を持っているのは,認知的アプローチの第二言語習得や心理言語学など,人の頭の中の仕組みに関わる研究です。ですので,ゼミでもその方向に関わるテーマには比較的対応がしやすいです。

逆に言うと,指導法や学習方法,教材開発などに強い関心がある人は,他の先生のゼミの方が学びが多いかもしれません。私もそうした領域に関心が全くないわけではありませんが,ゼミでメインとして扱いたいのはそこではありません。

ただし,最初から「このテーマで絶対にやりたい」と明確に決まっていなくても大丈夫です。むしろ,文献を読んだりゼミで対話したりする中で,少しずつ絞っていくことの方が普通だと思います。

例えば,過去の卒業研究のひとつでは,日本語と英語における移動表現の違いに関心を持ったところから出発しました。よく知られている話として,英語では run into the room のように,run のような動き方を表す動詞を使いながら,into the room で移動の経路を示すことがあります。これに近い内容を日本語で表そうとすると,「走って部屋に入る」のような言い方になるでしょう。「走る」と「入る」のように,複数の表現を組み合わせているわけです。一方,日本語では「部屋に入る」のように,「入る」自体が移動の経路を表していることがあります。

もちろん,最初はこうした現象に対して「おもしろい」と思うところから始まるわけですが,それだけではまだ卒業研究にはなりません。そこから,日本語を母語とする英語学習者は英語で移動を表すときにどのような特徴を示すのか,英語力が高くなるとその表現の仕方は変わるのか,といった形で,少しずつ調べられる問いにしていきます。さらに,問いを立てたら,それをどう調べるかを考えます。この研究では,短い動画を見て場面を日本語または英語で説明してもらう課題を作り,そこで産出された表現を分析しました。このように,最初は素朴な興味や疑問から出発して,文献を読みながら問いを絞り,方法を考え,卒業研究の形にしていくことになります。

4年次の卒業演習で扱う卒業プロダクトについては別の記事にもまとめています。卒業プロダクトとして何が求められているのかが気になる方はそちらも参考にしてください。面談の際に,希望があれば過去の卒業プロダクトを見てもらうこともできます。

ゼミでの進め方とサポート

ゼミでは,自分で考えながら進めることを大事にします。ただし,「全部一人でやってください」という意味ではありません。テーマの方向性,文献の読み方,発表の仕方,文章のまとめ方などについては,一緒に考えていきます。

私は,教員が何でも決めて,学生がそれに従うだけの形がよいとは思っていません。一方で,完全に放任でよいとも思っていません。必要なところでは相談に乗りますし,フィードバックもします。ただ,最終的には,自分の研究やプロジェクトとして向き合ってもらいたいと思っています。

大勢でワイワイというよりは,こじんまりと進める感じになると思います。これは,良くも悪くもそうです。人数が多いゼミのような賑やかさはないかもしれませんが,そのぶん,一人ひとりのテーマや進捗に合わせて話しやすい形にはなるのかなと思っています。

こういう人は合うと思います

田村ゼミに合いそうなのは,たとえばこんな人です。

  • 言語そのものや,言語の学び方に興味がある人
  • 知的好奇心や探究心がある人
  • 少人数でじっくり考えたい人
  • 答えがすぐに出ない問いにもある程度粘り強く向き合える人
  • 大学院進学や,もう少し学術的な学びに少しでも関心がある人

個人的には,大学のゼミというのは,「これをやったら何の役に立つのか」という問いにすぐに答えを出す場である必要はないと思っています。むしろ,自分がまだよく知らないことに触れて,それを少し真面目に追いかけてみる場であってほしいと思っています。したがって,知的探究心がある人には,田村ゼミが合う可能性が高いです。

大学院進学については,それを最初から強く決めている必要はありません。ただ,学術的なことに興味がある人にとっては,ゼミでの経験がその先につながる可能性は十分にあります。実際,「大学院はまだ全然考えていないけれど,研究っぽいことはちょっと面白いかも」くらいの段階でも,そこから考えが変わることはあると思います。

こういう人は,他のゼミの方が合うかもしれません

一方で,次のような人は,他の先生のゼミの方が合う可能性があります。

  • ゼミで,わかりやすく実務的なスキルだけを身につけたい人
  • 教員から細かく全部指示してほしい人
  • 言語の指導法や教材作成を中心にやりたい人
  • 「問いを立てて考える」よりも,「決まったことをこなす」方が性に合っている人

これは,どちらが良い悪いという話ではありません。ゼミには相性があります。ミスマッチ状態のままゼミに入ってしまうと,学生にとってもしんどいし,教員にとってもよくありません。面談は,そのミスマッチを防ぐための時間だと思ってください。

就活や進路について

このゼミは,就活のためのゼミではありません。ゼミの中心にあるのは,あくまで学問的な問いに向き合うことです。

私の個人的な信念として,大学教育が学生の就職活動に有益な貢献をすることそれ自体を主目的にすべきだとは考えていません。特に,私のような人文系の研究者が学生に対して本気で語るべきことは,「これをやると社会で役に立つ」「就活でアピールできる」といったことよりも,私たちの学問はこんなに面白いし,学問に真摯に向き合うことそれ自体に意味がある,そしてそのことは長い目で見れば人生を豊かにする,ということではないかと思っています。

学部,ひいては大学としては,卒業していく学生たちが「社会」で活躍することを対外的に示したいというのは現実的な話として理解できますし,就職率や就職先が一つの判断材料になっていることもわかっています。実際,オープンキャンパスで個別相談を受けるときも,どんな授業を受けられるのか,何を学べるのか,ということが話題になることは少ないです。ただ,社会で役に立つかどうか、が大学教育の中心に来すぎると,大学が「社会」や「政治」から要請されることをただただ実行するだけの場になってしまうような気がします。私はそれは違うだろうと思っています。

ただし,ここでこういうことを書けるのは,自分が今の立場にいるからこそだという矛盾というか,少し暴力的なところがあるのも理解しています。私は任期のない大学教員というポジションを運良く手に入れることができたので,「大学で学ぶことを就職に直接結びつけなくてもよい」と言えるのであって,立場が不安定な学生に同じことをそのまま求めるのは酷だろうと思います。ですから,学生の就職や進路にまったく興味がないわけではありません。

実際,これまでにも,文章の相談に乗ったり,面接での受け答えについて一緒に考えたりしたことはあります。私は企業就職活動の経験があるわけではありませんが,一応「オトナ」ではあるので,どういう伝え方をしたら相手に伝わりやすいか,何が問われているのか,といったことを一緒に考えることはできます。ですから,就活や進路について不安がある人は,そのことも含めて相談してもらえればと思います。

要するに,就活のためにゼミをやるつもりはありませんが,就活をしている学生を突き放すつもりもありません,ということです。ちなみに,就活についてはこういう記事も過去に書きましたので興味があれば読んでみてください。

就活で「AIに代替されるぞ」って言われてぐうの音も出なくなってしまう外国語学部の学生さんへ

面談について

シラバスに「面談」と書かれていると,身構える人もいるかもしれません。ただ,これは選抜のための面接というよりも,ゼミの方向性と学生さんの関心がある程度合っているかを確認するための時間です。

最初から完成したアイデアを持ってくる必要はありません。ぼんやりでも,「こういうことに少し興味がある」というものがあれば十分です。その話をしながら,私のゼミで応えられそうかどうか,一緒に考えられればと思います。

ゼミに入るか迷っている人へ

ここまで読んで,「ちょっと面白そうかもしれない」と思った人は,まず面談に来てください。逆に,「なんとなく違うかも」と思った人は,無理に選ばなくて大丈夫です。

また,実際にゼミに入っている学生がどう感じているかについては,本人に書いてもらった文章をこちらで公開しています。教員の説明とあわせて参考にしてもらえればと思います。

また,ゼミに入るほどではないかもしれないけれど,言語の認知プロセスや心理言語学には興味がある,という人は,関連する授業を履修してみてください。私の担当している心理言語学研究の授業は秋学期開講なので,私の講義を受けたうえでゼミに入るかどうかを考えるっていうことはできないのですが,人間がどうやって言葉を使っているのかという仕組みを考えるのは面白いということを一人でも多くの人に感じてもらいたいので,ぜひ履修してみてください。

最後に

私にとってのゼミは,まだ答えの出ていない問いに向き合ってみる場です。そういうことを面白いと思える人と,一緒にやっていけたらと思っています。

興味を持った方は,シラバスも確認したうえで,ぜひ面談を検討してみてください。